レビュー
アメリカ経済を支えていた人。

バブルを操った人物。
おかげで日本製品をアメリカ人が買ってくれ、
日本は輸出を伸ばすことができました。
先日、彼は自らの過ちを認めています。
賢いですね。
やもすると彼に対する批判が高まったかもしれない、
絶妙なタイミングでの発言でした。
言い訳がましいし、分析自体甘く、今読むとどう間違ったかがわかり、一読の価値あり

・ 「1990年代以降、世界各地で新たに市場競争が取り入れられ、5億人の労働者が流入。競争の激化によって世界的にインフレ率が低下。また、新興国の貯蓄率は高く、金融市場に余剰資金が溢れるようになった。これにより、資産価格が上昇。信用力の低い金融商品(サブプライムローン関連)のスプレッドは過去数十年で最低水準に近づいた」(P.14)。これには同意。
・ (1)頭金を負担できない借り手には住宅ローンの全額を貸す、(2)毎月の返済額を借り手が自由に決められる、(3)所得や資産を証明する書類がなくても融資、(4)不動産鑑定士による担保物件評価を行わなくても融資、などのまともではなかった住宅ローン状況(P.17)が書かれている。
・ 「証券化されていなければ、サブプライムモーゲージで信用損失が増加しても、米国国外には影響が及ぶことは無かったはずだ。また、これら証券化商品の格付けは高く付けられすぎていた」(P.18)はもっともである。
・ サブプライムローン問題と金融危機は、過剰融資と証券化の危険性を十分監督しきれなかったグリーンスパンにも責任はあるが、彼だけのせいではない。米国人の過剰レバレッジ体質、楽観主義、銀行員らの強欲主義などが根本的原因である。但し、「アメリカ経済は今のところ、当時の日本に近い状態には全くなっておらず」(P.20)との認識(リーマン破綻前の文章)は、今では白ける。また、「金融機関が信用収縮によって麻痺状態に陥り、資金を貸し出そうとしなくなっても、こうした企業にとって大した問題にならない」(P.33)との文章を、今、グリーンスパンは後悔しているだろう。
賛辞に値する名著

既に多くのレビュアーが、このわずか62ページの書物に対して惜しみない賛辞の嵐を贈っているが、まさにそれに値する名著であるといってよいと思う。
そこで、これ以上屋上屋の賛辞を重ねるのを避けて、他の方が取り上げていない事で、これもまた大いに注目すべきだと思う事を2点挙げたい。
一つは使われている言葉のこと。グリーンスパンは「世界市場資本主義」という目新しい言葉を使っている(原語で何と言っているのかは確かめていないが)。今まで使われてきた”市場原理主義”、”新自由主義”、”グローバリズム”などの用語が既に意図した偏見にまみれて使われ、いつのまにか否定的なニュアンスを色濃く帯びるようになったのに対して、もう少し冷静に事態を表現する新しい用語を提唱しているようで興味深い。
もう一つは、今後最も警戒を要するべきことは、信用収縮による世界的デフレの長期化ではなくて、むしろインフレの到来であることを強調していること。今はこのことについての議論は殆ど影を潜めているが、矢張りいつか必ずやって来るであろう問題であることは忘れてはならないのだろう。
評価を落としたマエストロの言い訳

市場から絶大な評価を受けたマエストロだがサブプライム問題で味噌をつけた。
この本はそれに対する反論の本である。
やはり頭がいいので肉を切らせて骨を断つ敵な自己弁護を繰り返している。
自分にも落ち度があったと認めながらも本当の致命的なミスは他社に責任転嫁しているところなど、不良債権処理をミスした大蔵省の官僚や政治家の自己弁護と似ている。
サブプライムを防げなかったことは彼の決定的な評価になるだろう。
金融機関は百年に一度の事態が起これば、破綻するリスクをとることを好んでいる(p.46)

サブプライムが原因になっていなければ、他の金融商品か市場で問題が発生していたろう、というあたりがキモ。問題は世界的にリスクが割安に振れすぎていて、トリプルCのジャンク債がアメリカの国債の利回りを4%しか上回っていなくなっていた、などであると(02年の段階ではこの差は23ポイントあったそうです)。リスクがここまで割安に振れすぎれば、いずれ、リスクを回避しようとする人間本来の性格と衝突するようになり、危機が起きるのは必然だった、と(p.39)。
ベアー・スターンズの救済に関しては、FRBは金融システムの崩壊か、最終的には政府が債権者を保護してくれるというモラルハザードが崩れるという地獄に通じるふたつの道のうちひとつを選ばざるを得なかったとしていますが、こうした措置はめったに行わないようにしなければならない、と珍しく断定的に語っており、リーマン・ブラザースの破綻が示唆されているように感じます。経営困難に陥っても必ず政府の支援が得られるようになると《本来の信用力だけで判断された場合よりも低い金利で資金を調達できるようになる》(p.46)からダメなのだ、と。
しかし、リーマンショックの後でも、今後十年間はアメリカの長期金利が上昇し、アメリカ国債の利回りが10%をうかがう展開になる、という予想は早くも破綻寸前のように感じます(p.57)。個人的には資産運用にアメリカ国債も考えようとは思いましたが。
